膝内側側副靱帯(MCL)は膝関節の安定性に重要な役割を持つ靭帯であり、スポーツでの損傷が多く見られます。
膝の内側に位置し、膝の安定性を高める靱帯です。
内側側副靱帯とは

内側側副靱帯は膝の内側にある靱帯で、太ももの骨とすねの骨を結ぶ帯状の組織です。
表層と深層の構造を持ち、周囲の組織と連携して膝の安定性を維持します。
構造の詳細と解剖学的特徴
内側側副靱帯は主に表層束と深層束に分かれ、表層は膝関節の大きな外力に対して抵抗します。
深層は関節包や半月板と密接に関係し、複雑な力学的負荷を分散します。
靱帯は血流が比較的乏しく、修復が遅れることがあります。
・表層束:大きな外側からの力に対応
・深層束:関節包や半月板と接続
・血管:修復が遅く慢性化しやすい
臨床的意義とリスク因子の整理
スポーツや交通外傷での外側からの衝撃などによって損傷しやすく、加齢や筋力低下がリスクとなります。
予防では下肢筋力とバランス訓練が重要で、同時に半月板や前十字靱帯の合併損傷が機能回復を難しくします。
| リスク因子 | 説明 |
|---|---|
| スポーツ外傷 | コンタクトや急停止・方向転換で受傷しやすい |
| 筋力低下 | 内転筋や大腿四頭筋の弱化が不安定化を招く |
| 加齢 | 組織の弾力低下で損傷しやすい |
内側側副靱帯の役割
内側側副靱帯は膝の内側を支えて外側からの力に抵抗し、運動制御や関節の安定を維持する役割を果たします。
歩行やランニング、方向転換時に重要な機能を担います。
運動時の力学と安定化機構
内側側副靱帯は膝の外側からの力を受け止め、内側での過度な開大や回旋を制限して安定性を保持します。
踵接地から蹴り出しまでの動作で負荷がかかりやすく、筋肉との協調が不可欠です。
・外側力のブレーキ
・過度な内側開大の抑制
・半月板や他靱帯との協働
日常生活とスポーツへの影響
損傷があると歩行時や階段昇降で不安定感が生じ、スポーツへの復帰が制限されます。
早期に適切なリハビリを行うことで筋力や運動制御を回復させ、再発予防が可能になります。
| 場面 | 影響 |
|---|---|
| 歩行 | 不安定感や疼痛で歩行が制限される |
| スポーツ | 切り返しや接触動作で障害が顕著 |
| 日常動作 | 階段の昇降や中腰で支障を来す |
内側側副靱帯損傷の原因

損傷は主に外側からの直接的な衝撃や膝に対する過度なストレス、無理な方向転換などが原因で生じます。
スポーツの接触や転倒、交通事故など多様な機序があります。
外傷性と非外傷性の発生メカニズム
外傷性は転倒などで、非外傷性は過労や慢性的なストレスの蓄積による微小断裂が含まれます。
若年のスポーツ選手は接触で、年長者は組織脆弱化で損傷しやすい傾向があります。
・接触スポーツでの直接外力
・方向転換時の過度な回旋
・長期の繰り返し負荷による微小損傷
合併損傷の頻度と注意点
内側側副靱帯損傷は前十字靱帯や半月板損傷を伴うことが多く、合併があると回復が大きく遅れます。
診断時には画像検査と徒手検査で他部位の損傷を慎重に評価する必要があります。
| 合併損傷 | 臨床的影響 |
|---|---|
| 前十字靱帯 | 膝の前方不安定性が増す |
| 半月板 | 疼痛やロッキングを引き起こす |
| 関節包損傷 | 腫脹や慢性的な不安定感 |
症状
急性期は疼痛と腫脹、内側の圧痛や膝の不安定感が主症状であり、重度では歩行困難や関節の開大が見られます。
慢性化すると違和感や再発しやすい膝の不安定性が残存することがあります。
急性期に現れる典型的な所見
受傷直後は強い痛みと内側の腫脹、圧痛があり、膝を真っ直ぐ伸ばすと痛みが増すことがあります。
時に皮下出血や内出血斑が出現し、歩行や荷重が困難になる場合もあります。
・強い内側の疼痛
・腫脹と圧痛
・歩行や荷重の困難
慢性期や見逃しによる症状変化
適切に治療されなかった場合、慢性的な不安定感や膝のこわばり、運動時の疼痛が継続し再受傷のリスクが増加します。
機能回復には筋力訓練と神経筋制御の再教育が重要で、早期介入が予後を改善します。
| 慢性症状 | 対処 |
|---|---|
| 不安定感 | 筋力強化とバランス訓練 |
| 繰り返す疼痛 | 活動修正とリハビリ |
| 運動制限 | 段階的な負荷増加で回復 |
損傷時の応急処置
受傷直後はRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を行い炎症と出血を抑えることが重要です。
安静時でも膝を完全に動かさず専門医の診察を早めに受けてください。
初期対応の具体的手順
まずは活動を中止し、アイシングを15〜20分毎に繰り返します。
圧迫と挙上で腫脹を最小限にし、歩行困難なら松葉杖で荷重を制限します。
・安静:活動を直ちに停止
・冷却:15〜20分ごとのアイシング
・圧迫・挙上:腫脹軽減のため実施
受診のタイミングと伝えるべき情報
強い疼痛や歩行不能、関節の不安定感がある場合は速やかに整形外科を受診してください。
受傷時の状況、疼痛部位、腫脹の有無、既往歴や使用中の薬剤情報を伝えると診断がスムーズです。
| 症状 | 受診の必要性 |
|---|---|
| 歩行不能 | 直ちに受診 |
| 大量の腫脹 | 数日以内に診察 |
| 軽度の痛み | 経過観察と必要時受診 |
テスト法と解説
内側側副靱帯の診断には徒手検査が有用で、ストレステスト、圧痛の位置で判断します。
診断精度向上のために画像検査を併用することが一般的です。
代表的な徒手検査の方法と判定基準
膝外反ストレスを与え、内側の開大や疼痛の増強を確認するテストが代表的です。
開大の程度や疼痛の有無で損傷の程度を推定し、他の靱帯損傷との鑑別も行います。
・外反ストレステスト:開大と疼痛を評価
・膝屈曲角度での差:重症度の推定
・比較検査:左右差を確認
画像検査の役割と選択
X線は骨折の除外に有用であり、MRIは靱帯の断裂や周囲組織の損傷評価に優れています。
超音波検査は動的評価や腫脹の局在を確認でき、迅速検査として有用です。
| 検査 | 利点 |
|---|---|
| X線 | 骨折の除外 |
| MRI | 靱帯・半月板の詳細評価 |
| 超音波 | 動的評価や腫脹の局在確認 |
治療方法
治療は保存療法が中心で、安静、アイシング、圧迫、物理療法、リハビリによる筋力強化が基本です。
重度や合併損傷では手術適応となる場合があります。
保存療法の具体的アプローチ
初期はRICEと必要に応じて固定を行い、その後は可動域訓練と筋力トレーニングに移行します。
機能回復に合わせて段階的に負荷を増やし、バランス訓練を組み込むことで再発予防を図ります。
・初期:安静と固定、アイシング
・回復期:可動域・筋力訓練開始
・復帰期:スポーツ向けの動作訓練
手術適応と術後リハビリのポイント
重度損傷や他靱帯・半月板との合併、慢性的な不安定性がある場合には修復や再建術が検討されます。
術後は段階的な荷重と可動域回復、筋力強化を計画的に進めていくことが重要です。
| 治療法 | 適応 |
|---|---|
| 保存療法 | 軽度〜中等度の単独損傷 |
| 手術療法 | 重度断裂や合併損傷、慢性不安定性 |
| リハビリ | 術後・保存ともに必須 |
損傷レベルとスポーツ復帰までの期間
損傷は軽度(Ⅰ度)から重度(Ⅲ度)まで分類され、復帰にはそれぞれ数週から数か月の幅があります。
適切な評価と段階的なリハビリが復帰時期決定の鍵になります。
各グレードの概略と一般的な復帰目安
Ⅰ度は伸張や微小断裂で安静とリハビリで数週から1か月程度、Ⅱ度は部分断裂で1〜3か月、Ⅲ度は完全断裂で手術や長期リハビリが必要になり得ます。
競技復帰は機能評価と医療チームの判断で安全性を確認して行います。
・Ⅰ度:数週間での日常復帰
・Ⅱ度:1〜3か月での競技復帰検討
・Ⅲ度:手術+数か月以上の回復期間
復帰判断の評価項目と再発予防
疼痛消失、筋力比(健側比)、可動域、スポーツ特異的動作の安定性が復帰判断の主要指標です。
再発予防には筋力バランスの改善と動作解析に基づくフォーム修正が有効で、段階的な負荷増加が推奨されます。
| 評価項目 | 目安 |
|---|---|
| 疼痛 | 日常動作で無痛 |
| 筋力 | 健側比80〜90%以上が目標 |
| スポーツ動作 | 切り返しやジャンプで安定していること |
まとめ
内側側副靱帯は膝の安定性に不可欠で、早期の適切な診断と治療が機能回復と再発予防に直結します。
症状がある場合は自己判断せず専門医に相談し、個々の状況に応じたリハビリ計画を実施することが重要です。
花笑整骨院では
当院ではこれまで様々な形態の靱帯損傷を治療してきました。
多くはスポーツ損傷で、これまでの経験と知識で可能な限り早いスポーツ復帰をお手伝いさせていただきました。
花笑整骨院ではスポーツの特性を活かしたリハビリにより治療のみではなく、パフォーマンスアップも行います。
公式LINEもございますので、お気軽にご相談ください。

